Shadow Work 2019
【アフンルパル(あの世の出入り口)】@tobiucamp北海道
上演日:2019年9月7日
上演場所:tobiucamp(北海道)
企画展 : 9/8〜23 白老町haku
作・演出:川村亘平斎
出演:川村亘平斎(影絵・音楽)
制作 :ウイマム
北海道白老町に10日間滞在し、白老アイヌの民話を元に影絵作品を制作。地元の子ども達とtobiucampにて影絵公演を行う。その後、飛生芸術祭の一環で、9/8〜23で白老町hakuにて本作品の影絵人形を資料集を展示。
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川村亘平斎 白老滞在製作日記2019年8/29~9/8
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830家を出発、11時の羽田発、1230頃新千歳。電車で白老、空港から思ったより近い。道中キンドルのアイヌ民話の本と送られた資料を読む。登別の神様の話が面白い。16時頃宿泊先のhaku着。4月にできたばかりの綺麗な宿。18時~24時、写真家ワカさん家で、マレーシアからのアーティスト・ヨンチアさんとウイマムのメンバーと夕ご飯。イタヤカエデの樹液を使ったアイヌのスープ【オハウ】絶品。今時期、鮭釣りをしている風景見れる情報など。25時頃就寝。
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730頃起床。hakuのカフェでコーヒー。930に資料を探しに「チキサニ」行くが不在だったので、10時~12時、白老図書館、地元資料を探す。さすがにかなりの資料を発見。倶多楽湖、樽前山、支笏湖(シコツコ)、ポロト沼、登別、白老川、シラオイ =シラウ虻(アブ+オ・イ(多きところ)、ウヨロ川、にしたっぷかわ、知里真志保 「和人は船を食う」、シャクシャイン、アフンルパル(あの世への入り口)、皮膚病の話多い、疱瘡。近くのスーパーで寿司を買ってポロト湖で食べる。13時過ぎ~1530、チキサニ行って、森さんから色々資料もらう。16時白老アイヌの田村さん、本田さんに話聞く。田村さんの母方のおばあちゃんは岩手から来た。「下駄履いて、馬乗って、しょっぱい川を渡って来た」というおばあちゃんの言葉が印象的。死者を葬る時、浜辺でチセ(家)を燃す。バリと同じような死生観、自然観を感じる。男性と女性で火葬方法違う。虎杖浜の灯台付近で儀式など。18時水野さんに音響機材借りる。20時頃スーパーで買い物,半値になっていた白老牛ピーマン、舞茸などhakuに戻って料理。2130就寝、3時頃一度起きる。雨。
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930hakuを出て山の方を抜けて1130頃洞爺湖着。今年の夏に洞爺湖に珈琲屋を出した友人の店を訪ねる。友人の店で、偶然10月岐阜で出演するイベントの主催者に会う。奇跡。オキさんから連絡、午後スケジュールを変更して影絵機材持って二風谷へ。夜マレウレウオキライブに即興影絵。マレウレウ・リエが3年ぶり復活ライブだった。終演後、先週のあきる野FWで一緒だったイラストレーターの方に遭遇。奇跡の出会いありすぎの1日。マレウレウの歌聞いて、影絵のイメージわく。11時頃haku帰宅して、野菜炒めなど作る。バイカーの集いの人たちと少し呑む。2430頃就寝。
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晴れ。9時過ぎに家を出てアヨロ海岸、アフンルパル調査。11時頃登別~倶多楽湖。13時トビウ会場視察、14時コミュニティーセンターでアイヌの高橋先生講演会。16時過ぎ、hakuにて、8/30にお話伺った本田さんが資料を持って来てくれる。鯨捕りの話。夕方苫小牧ホーマック、コープで機材買い出し。オキさんの持っていたLEDライト強くてよかったので買う。hakuで炭や塩ホルモン焼いて寝る。
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晴れ。午前中物語原案考える、やはりアフンルパルか。昼エビ穴子天丼。13時からhakuでオオスガさん(前の酋長・宮本さんの娘さん)から話聞く。4時間。かなり面白い。明治頃、おじいさんがラッコ船に乗ってカムチャッカあたりでラッコ漁をしていた~ワシントン条約で禁止+第1時世界大戦の影響で船を降りて山の狩をするようになった、など。樺太アイヌの昔話。虎杖浜の温泉行って、スーパーくまがいでセールのホタテ刺身、豚と白菜かって、hakuで料理。
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晴れ。ヒグマが出たという町内放送、毎日流れている。午前中白老図書館で写真資料収集。やはり地元だと大量の情報があって楽しい。昼グラナダのシーフードカレー。午後hakuにて影絵製作開始。エカシ、フチ、イヌ、子どもなど8体製作。サウナ、ヒグマにあったという話をしている林業系のおじさんいた。hakuにて白菜豚えのきアサリ煮込み、ニラ炒め。21時頃就寝。
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晴れ。引き続き人形製作。船に乗るエカシ、エカシとフチの仮面、クジラ、アイヌ文様の炎、アフンルパルの内部ほか。昼ウエムラ牧場でハンバーグ。水谷豊が先週来てた写真あり、反町隆史も、たぶん「相棒」だな。午後も人形製作。17時、ダイソー、苫小牧のコメリに材料買い出し、風呂。夜、栗栖さんがホッキ貝持って来てくれる。たまたま宿にいた田中さん(長野からの人)と食べる。田中さん、本当はポロトにキャンプの予定が、熊が出ているので断念、偶然hakuに宿泊したそうだ。トマトズッキーニほうれん草パスタを作る。22時頃就寝。本日も午後クマ警報
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日中、ライトの台など制作、苫小牧にてLED追加購入。今作用の音楽作曲、影絵練習。夜、白老中学校にて影絵ワークショップ。中学生と小学生にオリジナルの「カムィ(アイヌの神様)」を作ってもらう。マレーシアからのアーティスト・ヨンチアが見学にきてくれて、そのあとhakuでビール。ズッキーニの炒め物作る。シャワー浴びて寝る。
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連日の製作のせいか朝起きると調子悪い。温泉、マッサージ、スーパーくまがいで海老買って、昼トマトエビパスタ作る。昼寝。13時頃人形黒染め、音楽練習。16時頃からトビウ現場準備、スクリーン設置など。18時過ぎから子どもたちと影絵リハ。子供達とのリハ後、本編のリハを1h程度。なんとかなりそうだ。20時頃帰宅途中、鹿の群れ(4頭ほど)が走っているのを見る。帰りがけにラーメン。22時過ぎ就寝。今日は娘3歳の誕生日。
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11時に風呂。15時頃苫小牧に機材買い出し、1630頃、台本元ネタ整理。17時過ぎtobiu現場入り。オキマレウレウ、アイヌ伝統舞踊に見る。19時頃からステージセッティング、2020頃本番。子どもたち、リハに比べてシャイだった。21時過ぎ終演、本番最後にアフンルパルの元ネタのことを話し忘れたこと、演奏一部失敗したことが悔やまれる。終演後、石川直樹さん、森永さん、マレーシアでお世話になった谷地田さんなどと話す。tobiuで出店していた石窯のピザパン食べて、22時頃hakuに戻る。その後hakuの菊地さんとカフェエリアでの影絵人形展示24時頃まで。26時就寝。
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朝、ヨンチアたちとほくように温泉+朝食。製作チームといろいろ話す。アフタートーク、文字資料、展示など公演後にどのような展開が考えられるか、次回以降の課題が見えた。1045白老電車乗って新千歳。台風15号の関係で、自分が乗るairdo14時の便以降、大風で欠航。ギリギリセーフ。16時前に羽田、妻と子供が迎えに来ていた。帰宅後、ピエンロー。気圧のせいか頭痛い。21時頃就寝、夜中台風で暴風雨。
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アフンルパル台本
1
猿のニシオカとカエルのヤマダが市民参加の子どもカムイたちを集める。 市民参加の子どもカムイたち自己紹介など 白老のエカシに話を聞くために集まったみんな
しかしエカシが来ない
ヤマダがエカシを探しにいく
2
近くの空き地でポンチセ(小さい家)が燃えている
そのそばでエカシが泣いている
ヤマダがエカシに話しかける エカシ「フチが亡くなった アイヌの女はこの世で家を持てないので、あの世で家を持てるよう に、その人がなくなると小さな家を焼く」
エカシとヤマダ海岸へ行く ヤマダ「あれ?どこへ」
エカシ「昆布でもとって気を鎮めるのさ。」
丸木舟に乗って昆布を取るエカシ 遠くの浜で死んだはずのフチ(老婆、ここでは奥さんの意)が昆布を取っているのを見つける エカシとヤマダ、フチを追いかける
フチ、浜辺の洞穴に入って行く
エカシもフチを追いかけて洞窟に入る
ヤマダ、怖がって洞窟の入り口で待つことにする
3
アフンルパル(あの世の入り口=洞窟の中) アブストラクト アフンルパルの中を漂うエカシ アフンルパル内で人とすれ違うエカシ 「ここはどこか?」と聞くが誰も答えない 犬が吠えてきて慌てて逃げるエカシ 逃げていると、フチのポンチセ(家)を見つける エカシ「どうして燃やしたはずの家がこの洞窟の中にあるんだ?」 エカシ 咳払いをして家の中に入る
家の中にフチがいる エカシ「オォ、死んだはずのおまえがどうしてこの洞窟の中にいるんだ?」
フチ「なんだ、あんたかい。なんでこんなところにきた?」
エカシ「ここはどこだ?他にも人が住んでいるみたいだな。話しかけても答えてくれないぞ。」 フチ「あんたが入って来たあの洞窟はアフンルパル(あの世の入り口)だ。つまりここはポクナ モシル(=下方の国=カムイコタン=あの世)なんだよ。」
エカシ「えー!!」
フチ「あの世とこの世はいろんなことが反対になる。昼と夜とかね。あの世の人間は、この世の 人間が見えない。この世の人間はあの世の人間が見えないのだ。犬だけがあんたに気づいたよう だね。生きている間に、悪いことをしたやつが、生まれ変わってカエルやまむしになるんだ。(和 人は船を食うp143)」
エカシ「びっくり。とりあえず飲み物をくれ」
フチ「こっちの世界のものを口にすると帰れなくなるぞ。生きたままこっちの世界にいると、誰 にも気づかれないのでつらいぞ。それよりも、はやくカンナモシル(上方の国=この世)へ帰れ。 アフンルパルのあった浜には「ショキナ」と呼ばれる恐ろしいクジラがいる。ここでうかうかし ているとショキナが襲ってくるぞ。
エカシ「そりゃ、いそがなきゃ」
フチ「あんた、よく聞いて。あの世に一度来てしまった人間は、この世に帰っても長く生きられ
ない。身代わりをたてなきゃダメだ。」
エカシ「えー、そんな人いないよ」
フチ「だれでもいいんじゃ。始めに会った人に嘘をついて、中に連れて行けばお前は助かるぞ。 itak-kiru(P153)さぁ、早く帰れ、わしはお前が天寿を全うするのを、ポクナモシルで待っとる からね。」
エカシ、アフンルパルから出る
洞窟入り口
エカシ 洞窟から出てくる ヤマダ 中で何をやっていたか聞く エカシ ヤマダに中に入れという
ヤマダ 中に入る
エカシ 逃げる ヤマダ 洞窟から出てくる「中に何にもなかったですヨォ」 ショキナが襲いかかってくる ヤマダ逃げる
5
ニシオカのところにやって来たエカシ
エカシ「ヤマダは帰ってこないだろうから、早速お話を始めましょう」
ヤマダ 帰ってくる
エカシ「あれ?どうして帰って来られたんだ?」
ヤマダ「どうしてって、あの洞窟奥に何にもなかったですよ、その代わりクジラに襲われましたけ ど、なんとか逃げて来ました」
エカシ「そうか、まぁいいや。それでは猿のニシオカさん、本日の私のお話始めますね。むかし むかし。。。。」
ニシオカ「お話聞きたいところですが、もうお時間が来てしまったようです。この続きはまた今 度」
おしまい
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